「二年F組弁当合戦」感想

アーデルハイト視点①

p.2

 魔法少女学級二年F組は異常なまでにイベントが多い。一ヵ月足らずの間に、夜間行軍、読書感想コンクール、班対抗合唱コンテスト、遠足、それ以外に細々としたレクリエーションも加えれば二桁を超えているだろう。

 黒序盤のテティ視点でetc表現されたイベントの数々が「二桁を超えているだろう」と明記されて、生徒達の触れ合ってきた時間の想像の余地が広がった。演劇で眠れる森の美女することになってお姫様役のライトニングが演技中本当に眠り起きんかいと王子様役に突っ込まれたり、海でスイカ割りやってメピース!ってクミクミ&アーデルハイトが声掛けてたりしないかな。誰も死んでない状態で短編が公開されていき、こうして想いを馳せる経験はシリーズで初めてなので、のめり込むほど次巻への祈りが強くなる。

 

p.4

 そんなアーデルハイトにとって「おやつ三百円分」はワクワク感に溢れていたが、娑婆の小学校に通っていた他三名にとっては既に飽き飽きするような事柄だったらしい。

 義務教育から切り離された故に残る幼心的憧れでアーデルハイトの捉え方が一段階深まったように思える。見識が広がるのいつだって喜ばしい。

 

p.5

 リュックサックの中からリュックサックと同じ大きさのおにぎりを取り出し、抱えながらむしゃむしゃと食べていたプリンセス・ライトニングの姿は見る者を唖然とさせた。

magimemo.hatenablog.com

 上記の記事でアーデルハイトのおにぎりを再現したことがあり、こうして改めて描写された巨大おにぎりを見ると、認識が甘かったと反省せざるを得ない。記事内のサイズでも食べるの精一杯だったのに、それを優に超えるであろうブツを完食する姿は他の魔法少女達が唖然するのも納得。

 

クミクミ視点

p.9

「やあやあ、はじめまして」

 魔法少女だ。見覚えが無い。床まで届く長い髪にはグラデーションがかかり、コスチュームはパジャマ、大きな枕を抱いている。にこにこと楽しそうな笑みを浮かべていた。

 この後の人間味フランチェスカとペチカ映像も含めて、8周年短編に相応しい豪華なゲスト。綺麗なメアリと理想のヴェスナナの再登場にも驚き。理想魔法少女達の再登場はこれが初で、つまり中国拳法を使うあの魔法少女も名推理を繰り広げるあの魔法少女も今も夢の世界で生活し続けてるってことなのか気になります。

 

p.13

「自分で作れないなら借りてくればいいのです! それでは綺麗なメアリ、用意しておいた物をぜーんぶ出してください」

 無印の電子書籍版あとがきで「ねむりんあたりは魔法の国を救うかぶっ壊すかしていてもおかしくありませんし」と言われていたように、この現実干渉は流石のポテンシャル5魔法。キークの電脳空間に引き入れる技術?思い出す。凄い凄いとは前々から思ってたけど、こうして衰弱した状態でも現実干渉してる様を見ると、現実で生きてる時にもしその気になってたら本当に魔法の国ぶっ壊せてたのかもと改めて思う。ねむりんが久しぶりに見れて満足。パジャマ型エプロンを着る立野玖美子さんかわいい。夢だけど夢じゃなかった。

 

メピス視点

p.14

「あなたが落とした斧は、金の斧ですか?」

 めちゃくちゃびっくりした。遭遇する=やばいF.O.E魔法少女と認識している分、何故ここにと混乱。しかも、

p.15

「あっ、あっ、あっぶな! こんな狭い所で暴れないでくださいよ! 物が堕ちて壊れて弁償しろなんてことになっても私なんてろくに貯金も無くて」

 明確に自我があり人間味溢れる人物に変貌していて更に混乱。フランチェスカの口から「貯金も無くて」なんて台詞を聞く日が来るなんて。何故こんなに地に足の着いた性格になってるかは今後のbdで分かると予想して今はただ待つのみ。

 

リリアン視点

 初のリリアン視点。「メピスはなんだかんだ優しいため罰ゲームは左程苛烈なものではないはずだ」が腐れ縁を感じさせる。テティもクミクミもアーデルハイトも含めて、メピスと接する機会が多い人物達はメピスをちゃんと理解していることが伝わる描写があるの好き。

 

p.19

 魔法の国のパスワードとして最もよく使用されているといわれている四桁の数字━━始まりの魔法使いを示すといわれている━━を入力してみた。

breakdown第5話 p.9

 名前の頭を数字にする魔法少女は少なく、数字のみで名付ける者は更に少ない。

 数字のみで名付ける者が少ないのは始まりの魔法使いと重ならいような配慮があるのかな。

 

アーデルハイト視点②

p.21

 バスではカラオケで魔法少女メドレーを皆で合唱、居眠りしていたプリンセス・ライトニング以外は大いに楽しんだ。降りてからは子猿のじゃれ合いに笑い、だらけ切ったハイエナにヤジを飛ばし、カピバラの潜水に心を和ませ、さて次は、と時計を見るともう正午に近い。楽しい時間は早く過ぎる。魔法少女に変身していなければ猶更だ。

 キューティーヒーラーの曲の時は特にサリーが愉しげだったであろう心境が窺える。魔法少女であると同時に年頃の女の子でもある少女達がこうして年相応に楽しみ動物園を満喫している姿は心和む。

 

p.22

 ランユウィが驚きの声をあげてサリーの弁当箱を指差した。他の班の生徒達も立ち上がり、サリーを取り囲んで弁当を見下ろす。そこには海苔やそぼろ、桜でんぶを使って描かれたキャラクター──キューティーパールとキューティーオニキスがポーズを決めていた。

 「あの教師が生徒に対し演技でなく感心するところを初めて見たかもしれない」で黒p.90であったようにカルコロ先生が「教師らしさ」を演じているのが見抜かれていて、テティの無難にいこうとして無難にいけてないところを自分と重ねていたのがより分かるように。

 

p.24

 アーデルハイトは熱湯の入った魔法瓶とインスタントラーメンのカップを取り出した。

 パナースがカップラーメンをどう捉えているか知りたかったので自身が双龍オリジナルブランドで出している事を知れてよかった。後輩想いな面も見られて嬉しい。

 

ねむりん視点

p.28

 魔法少女達がぐるりと円卓に座り、今日も反省会が始まった。

 今日「も」とあるのを見るに、ねむりんと綺麗なメアリ+α(理想魔法少女達)が困った魔法少女を抽選でお助けし続けていたのが分かる。ねむりんすごい。

 作中で夢の世界を任意でやってこれたのは『夢の中の修行』を師匠から教わっていた二代目のみで、ラズリーヌ陣営のライトニングが狙ってやってきたのはやっぱり初代の息がかかってる人物の証明になり得る。

 ウィンタープリズンとライトニングの夢のようなツーショットが実現したの熱かった。夢だけど。やっぱりねむりんはすごい。

 

 祝シリーズ8周年特別短編よかったです。おめでとう8周年ありがとう8周年。