魔法少女育成計画「白」感想①

白 第一章

『そんなの嫌だよう』

「私だって嫌だよう。

 breakdownにもジューパペ登場&人事に異動したと思わしき台詞があったものの、F2P勢が本編に登場するのはいつだって驚く。しかも人事部門の部門長副部門長の超出世。ジューベさんこんなに茶目っ気ある人物だったの!?という衝撃もあった。みっちゃんに続き教育番組に出演してほしい人物ランキング上位者。

 F2Pといえば「なんかこう最近いまいちハジケ切れてないっていうかさあ。レジスタンスも思ったほどじゃなかったしなあ」の台詞的にレジスタンスがボコボコにされたようにしか見えず、「最終回まであと数話というクライマックスで更新が謎に止まっちゃってる(柚木先生談)」の情報を踏まえると、その残り数話がエも殺戮タイムだったのか謎が残る。元副部門長のクリオも含めジューパペとエも以外のF2P勢の安否不明すぎるのでいつか連載再開すると信じて待つ。

白 第一章

 ホムンクルスは耐用年数が短くもって数年

白 第一章

 固有の魔法を使わせれば恐ろしい勢いで耐用年数が短くなっていくという欠陥がある。

 中庭の5人は特別誂えの肉体で遺跡探索が目的のため、一概に上記ホムンクルス設定が当て嵌まるとは限らない。ただホムンクルスであることに変わりないからある程度の寿命の短さはあると思う。心抉られる。

 白は生命に加えて記憶に自我に魂と死が広義になったのと中学生らしい青春を過ごして二年F組全員に思い入れが強まる中での日常の崩壊と予想外の展開に叫喚する回数が尋常じゃなかった。黒第一章時点でテティはもう別の存在って事実言葉にならない。本物のテティは短編(地獄巡り)でしか確認できないんだよな。

 中庭の5人が生存か死亡済みかの解釈は「記憶や自我」って表現に魂が含まれてるか否かに掛かっているのと、「フレデリカの水晶玉は死んだ者を映し出すことはできない」は肉体(髪の毛)を媒介とする魔法だから肉体のみ死でも発動しない場合もあり得るならフレデリカの魔法が死亡判定=魂の死とは限らず、でもハルナ校長の人物観的に5人の魂度外視してそうとも思うので、願望としては遺跡探索が終わった時用に元の肉体も保存していて魂もある生存認識したいけどあまりにも願望すぎて可能性が高い方はどちらか考えるともう既にオリジナルは死と捉えてしまう。二年F組で一番瞬間的な逃走に優れている魔法の出ィ子ですら逃れられなかったのが絶望的。

白 第二章

「アーデルハイトお前滅茶苦茶話し込んでたじゃねえかよ。それで腹抱えて笑ってたじゃねえかよ。油断もクソもなく仲良くなってんじゃねえかよ」

「いやあれはちゃうねん」

 アーデルハイトは顔の前でぶんぶんと右手を振り、同じように顔も振った。

「袋井魔梨華の失敗談なんて魔王塾卒業生なら食いつかんわけないんや」

白 第二章

「いやでもメピスもなんか話し込んでたやん。昨日のレクリエーションで」

「いや、あれはさ。休み時間にカナと話してた漫画をスノーホワイトも読んでるってただの雑談よ。別にそんな楽しくおしゃべりとかそういうのじゃなくて」

「傍から見たらかなり楽しそうやったで」

 明るい話題に切り替えて好きな平和シーン。挿絵でアーデルハイトこんな風に爆笑するんだ!と人物観解像度高まった。bdの挿絵アンケでランキングTOP3が全部挿絵化なかったことに正直思うところはあったけどそれはさて置き白の挿絵全部良かったです。

 スノーホワイトがメピスの好む漫画(バトル、ヤンキー、反社)読んでたの昔の思い出なのか元から好みだったのかブラックコーヒーと同じく精神的な変化が影響したのか何にせよあの楽しそうに会話してる二人の挿絵見ると平和感じて心温まる。サリーとも仲良く話したらしいけどアルタイルにサイン貰った話とかダーキュと直接対決した話には触れたんだろうか。

白 第二章

 プシュケはぶつぶつと何事かを呟きながら学校指定の通学鞄からブルーレイを三枚取り出し、サリーは別のブルーレイ三枚を取り出してプシュケのそれと交換した。

白 第二章

「いや髪留めの括り方がちょっと乱れてたでしょ。あとリップにグロス感があってこれは唇の荒れ対策入ってんじゃないかなって思ったんだよねえ」

 プシュケはふんと鼻を鳴らし、指先でフォークを回転させてから更に置いた。

「よく見てるね」

「まあねえ」

「その観察力がキモい」

 そこから呪詛のように悪態が零れ出し、この分なら心配する必要もないかとサリーが密かに胸を撫で下ろした。

 良い。やっぱり白の前半は関係性と平和な面が描写されてるからこそ後半の展開が心にくる。数が多すぎてどこから観たものやらと困ったらしいライトニングがサリー経由でキューティーヒーラー作品に触れようとしなかったのはプシュケに掛り切りなのを配慮したのか単にサリーが絡むと面倒だと思ったのかな。

白 第二章

 出ィ子の後ろから、ごく自然に、それが当たり前のように病室に入ってきて「お久しぶり」と微笑んだ。その微笑みはランユウィの心を浮き立たせ、幸福感に浸してくれた。

 お見舞い愛染さんの挿絵も良い。結果的にプリン完食したけど食いしん坊の愛染さんが誰かのために食べ物買ってくる行為自体はレアそう。後にランユウィがサリーを羨ましそうに見てたのはその自信か容姿か愛染さんと仲良さそうに話してたからと解釈。愛染さんは愛染さんで退院の報告に顔をほころばせてるの好き。出ィ子の人物評でいう思いを隠すことが不自由と考える愛染さんのその時の反応はランユウィが戻ってくるのが素直に嬉しいって感情ではないかと。初期のライトニングだったら同じようなリアクションは取らなかったのでは。

プリンセス・ライトニング/田中愛染という人物について - マジカル自分用メモ

黒(~第六章まで)のライトニングと白のライトニングは別個体か同個体か - マジカル自分用メモ

 田中愛染さん考察は二記事に書くくらい長くなったから考察方面は省略。

白 第三章

 一つしかない椅子の周りを三人の少女が歩き出す。フルーツゼリーを賭けた椅子取りゲームの始まりだ。

 ほっこり平和日常。学校で遺物を巡って三勢力が争う展開の暗喩とも捉えれる。こういうシーン読んでると林間学校とか修学旅行とか二年F組の平和妄想したくなる。創立祭が無事に開催して美味しいラーメンと皆で頑張ったオブジェに飾り付けと個性豊かなスタッフ達が一般生徒達の心鷲掴みにしてお客さんに混ざって食べたがる愛染さんになんでやねんって漫才始まって最後にお揃いのクラスTシャツ来た皆で写真撮って掛け替えのない思い出になる未来あってほしかった。

白 第三章

 地下の研究所では、これから犠牲になる魔法少女の声を聞きながら、それを無視した。あの時のスノーホワイトは終始そんなことをしていた。

 そこではインフェルノから思いを託された。N市ではハードゴア・アリスに彼女が誇らしく思う魔法少女であり続けることを誓った。ラ・ピュセルが命を落とした時の気持ちを忘れることは絶対ないだろう。

 スノーホワイト、これらの思いを「彼女達から渡されたバトンを持っている限り、スノーホワイトは歯を食い縛って前進しなければならない」とバトン認識で前進し続けるつもりなのに、次巻でスノーさんの物語の終わりなのを考慮するとバトンをゴールまで運びきれるかゴールとは何を指すかリップルと生存できるか祈りが増す。生存組が死者に触れる描写にはいつも心揺るがされる中、リップルのトップスピード然り始まりのレジェンドだけあって無印勢の名前が挙がると特にくるものがある。

白 第三章

 プフレは全ての条件をクリアしている唯一無二の協力者だったが、プク・プックが起こした事件の中で生命を落とした。奇跡のような立ち回りでシャドウゲールを護った、とラズリーヌは驚いたが、師匠にいわせれば、情緒と感情を重んじたせいで志半ばで果てることになった、となるのだろう。

 この「シャドウゲールを護った」の一文声出た。レーテ様ですら駒として利用としてあまつさえプク様倒して救い出した知性と協力と努力と何よりも護が最優先のお嬢が成し遂げたことの凄まじさが他の誰でもない三代目に「奇跡のような立ち回り」と表現されるのが良い。

 キャンディーに影響されて心や行動を乱したことが一度もない三代目ですら影響を及ぼすプフレの感情の強さ濃さたるや、「非常に面倒臭く、ややこしく、鬱陶しい」と言い表されてシャドウゲールを思い自然と笑みが浮かんでお嬢の客観的且つ主観的でもある読み取りには人物観がより鮮明になった。三代目の魔法だからこそ。

 QUEENSエピローグの「痛い目を見ますから」は初代が見抜きの魔法であることを踏まえるといつか三代目は内なる感情が働きかけて生死に関わる気がしてならない。

白 第四章

 ホムンクルス事件の時、カルコロは積極的に生徒達を守りにいった。動機はといえば、当然自己保身だ。

白 第四章

 先日山の中でカルコロがとった行動は、客観的に見ればフィクションの中の教師そのものだったのではないか。

 確かに、あの行動はカルコロに満足感を与えた気がする。そして立派な教師であれば、ここですべき行動はなんなのか。カルコロはわかっているはずだ。だが考えが纏まらない。

白 第四章

 上手く言い表せない気持ちがある。

 大半の生徒達に軽んじられて(呼び捨て、頼りない、やる気がない)、でもカルコロ先生は教師にされた人物で授業内容も制限されてそんな環境で授業内容に笑い所を作ったり何やかんやで生徒達を見ていたりあの夜の行動は間違いなく迅速かつ的確でそれを薄っすら自覚していたのはよかった。先生は凄い。

 魔法使いの肉体だから憑融を免れる、犯罪学に詳しいからグリムハートを避けられた、スノーホワイトに同情されて教師の座は保たれた、息抜きに窓の外を眺めていたからいち早く襲撃者に気付き攻撃できた等々かなり紙一重なシーンが多い。魔法使いと魔法少女の両方の才能持ちだからこそできる高速詠唱術は波紋とスタンドを両方使えるジョセフみたいでかっこいい。黒で足動かして珍しく叫んでた先生とプシュケが白で足と頭部を怪我したの嫌な巡り。

白 第四章

「特別進学コースの人……ですよね」

 一人ではない。眼鏡の女子の後ろに男子二名、女子二名、合計五名の生徒達が、年頃の好奇心をいっぱいに湛えた表情をカナに向けていた。

 モブ基一般人が魔法少女及び人間態に惹かれる展開が大好き故、梅見崎生徒でよく妄想していたらそれがはっきりと描写され具現化しネームドまで登場して絹乃宮さんの時と同じく湧き立ちまくった心が。

 女性同士の関係性を際立たせる手段として男性を世界から徹底的に排除するのは好きじゃないので、こういったシーンで男子も登場してるのは嬉しい。性別問わず皆心奪われて欲しい。

白 第四章

 なにも見てない目で、なんの役にも立たないものを作っている。

 ひょっとしたら彼女にとってなんの役にも立たないものではないのかもしれないが、シャドウゲールが説明してくれない以上「チューブやコードが滅茶苦茶に絡んでいて無暗に光る複数のメーターがなにを表しているのかもわからない数値を示している機械なんだが前衛芸術なんだかよくわからないもの」でしかない。少なくともデリュージにとってはそれ以上のものではない。

 ファルを呼び出す装置だったりしないかな。restartの時のなにかあればヘルプボタンを押してファルを呼ぶか細い記憶を頼りに。実際黒で作業中にファルの声が一瞬聞こえた気がした描写があったし。赤までにファルが復活するビジョンを思い浮かべるにはこの可能性しか頼れない。

白 第四章

 ふと振り返ると唇が触れそうな距離にリップルの顔があった。

 驚いて声をあげて跳び退ったが、リップルは距離を維持してルール追随し、胸倉を掴んだ。

白 第四章

 さり気なく自分の胸に左手を当てた。まだ少し脈が速い。さっきのリップルには、本当に心臓が止まるかと思うくらいどきどきした。

 同性の距離の近さとドキドキする描写が好きと再認識した。スノーホワイトを大事に思ってるあのリップルが学級側を任せる程にスノリプの関係がルールーの信頼に重なってるのが熱い。二人とも父親がいた頃の記憶(精神に影響)が魔法に起因している可能性が高いコンビ。

 リップルの「だがトップスピードはもういない。ルールーと話している間に思い出した」って地の文、自分が死んだように生きてたから相棒の死の実感湧かず、それがルールーの存在によって生きる上での苦しみ以外の感情がこの会話の最中に生まれて死を再認識するくらい生の側に戻ったと伝わり印象深い。

白 第五章

 悪いやつではない、むしろ可愛げはあるが、突飛な行動のせいで目を離していられない同居人、というのが今のメピスにとってのカナ評だ。最も相応しい言葉を選ぶとすれば「妹分」というところだろうか。とにかく世話がかかるのがそれっぽい。

白 第五章

 メピスは他人が思っているほど感情だけで生きているわけではない。深く思い悩むこともあるし、しっかりと反省することもある。ただ感情を制御仕切れないことがままあるというだけだ。

 メピスに対する黒で受けた喧嘩っ早いヤンキー面での印象が実際は思っていたより理性的で自分を客観視できてたのと「己を殺す(作中表現)」ことを厭わずでも任務だからで完全に割り切れない二年F組への思い入れとテティへの後悔が結果的に言葉通りの「己を殺す」中庭に繋がってしまったことや、洗脳状態でも本来抱くはずだったこと(カナへの心配、アーデルハイトは話せば分かり合えるのでは、今殴り飛ばしたのは仲間だったのでは等)を我に返って考えたり常に強気でいる理由も含めてそれだけ心遣いが強く、リアル中学生でそれらの思考と性格の持ち主であることも加味してメピスは白で大分見解が深まった。ちゃんと手洗いうがいをしてご飯を食べる時は手を合わせていただきますと言う描写だけでも普段と比べた佐山楓子の根の部分が窺える。

 カナとメピスの同居生活、もっともっと続いてほしかった。

 

 感想②(第六章以降~)に続く。

魔法少女育成計画「白」感想② - マジカル自分用メモ