魔法少女育成計画「白」感想②

魔法少女育成計画「白」感想① - マジカル自分用メモ

 感想①の続き。

 カナとメピスの同居生活の期間は臨時休校+スノーホワイト転校後から10日経っている+作中時間経過を足して計算すると半月以上。幕間というか何というかこういう作中で実際にあり得る範囲でどんなことがあったか想像するのは楽しい。「俺はラーメンなるものを初めて食べた」=メピスはカナにカップラーメンを出したことはなく一応カナが料理していた時もあったのでインスタント系はあまり食べなかったのでは──といった想像をするのが楽しい。

 第六章以降の感想を書き連ねる前に白の田中愛染さんは新鮮な一面がいっぱい見れて嬉しかった話を。揚げパン力説、お見舞い、給食の話はした?、平手で机をバシンと叩く、匂いもあれば素敵、歴史的和解を見逃して後悔。どれもよかった。ライトニングを筆頭にメピスとドリィも見解が大きく変わった人物。リリアン、出ィ子辺りもそう。本編一冊分の内容を読めばそりゃ人物観は更新される。

白 第六章

 まだ新人の頃にクラムベリー事件の調査を命じられ、目を覆いたくなるような惨劇をいくつもくつも目の当たりにした。生き残っていればきっと大成したに違いない綺羅星のような魔法少女達が、戦闘能力と小賢しさだけに長けた連中の犠牲になった。

 調べれば調べるほど憂鬱になる事件だった。出世の足掛かり程度にしか認識していなかった調査班での毎日は、魔法少女について考え直すきっかけになった。

白 第八章

 弱い者いじめが大好きなサディストの無法者ではない、己の成り上がりしか目に入らない派閥の劣兵でもない、正しいことを正しく行える本物の魔法少女を養成する。森の音楽家が起こした悲劇は二度と起こさせない。エピゴーネンは残さず駆除する。

 見解云々でいえばハルナ校長もその一人。目標が立派なだけに冷酷無慙と言い捨てるのは省くまれるものの憑融は人権侵害なんてレベルじゃない新しい形の殺人認識。思想、眼鏡、死んだ魔法少女を再現できるデータ量、スノーホワイトに好感を持っている、とキークとの共通点が多く電子の海に沈んだキークの人格が混ざったのではと思えなくもない。

 キークもお嬢もフレデリカも初代もプク様も晶達も革命家思考で目標の為に犠牲を払う人物は今迄にもいたのに今回のハルナに何故格段「残酷」と感じてしまったかは、白前半の生徒達の日常や関係性が描写された分、黒から白までの間による愛着、短編や裏話や妄想で培った思い入れの強さが起因していると思う。

 本物の魔法少女の養成が目標のハルナ校長は「魔法少女育成計画」のタイトルに相応しい人物であると捉えれる(フレデリカも)。正しい魔法少女を受け入れるつもりが工作員(三班)とテロリスト(二班)が入学してきたら反感を感じるのも囚人にイラつくのも納得。ミス・リールが軽視されるのは腑に落ちないけど部門の推薦枠は漏れなく派閥の権益を拡張すべく息のかかった不埒者判定なんだろうか。魔法使い達の汚さを身を持って知っているラギの「これは理念の通りにいくものではないだろう」は流石の先見の明。

 生徒だけでなく先生に対して「ただ殺す、というだけならともかく」とあったり佐藤さんこと音楽家ホムンクルスを私兵にしていたり思想を考慮すると所々で違和感がある。その思想でよりにもよってクラムベリーを使うの?って違和感が。そこら辺は考え分けてるってことなのかな。

 さらっと触れたけど佐藤さんの正体には心底驚きました。自分の黒の感想を読み返したら中庭に漠然とした恐怖を感じていて、この時点だと漠然とした恐怖止まりでその先が想像できないのも無理ないよなってなった。中庭の園芸家スタイルのクラムベリーのビジュアル想像すると面白さが勝る。魔法少女紹介で一人だけネタ全振り、説得、作詞、墓穴、負け犬が、ボス未認定、箱収納から未だ音沙汰なし等々音楽家は約10年前からネタが絶えない。

白 第六章

「向こうに……倒れている」

 顎で示した。グィネフィリアのことだろう。

 連戦、不殺縛り、片腕片眼の状態で魔王塾卒業生に勝つ実力は流石みっちゃんに勝った折り紙付きの強さ。

 キミエラに黒騎士に赤ちゃんにトカゲと魔王塾卒業生って思ってたよりいるんですね。ぽっと出でも魔王塾って経歴だけで指標と脅威度が分かり易い。こういったモブ魔法少女達に対してあとがきの「キャラクター紹介にすら掲載されない彼女達にも一人一人、人生、そして魔法少女生、つまり歴史があります」は確と心に刻んだ。

白 第七章

「あなたも変わりましたねえ」

 口にした直後、躓きかけた。見れば、ライトニングが足を止めている。

「変わった? 私が?」

 カルコロを食い入るように見詰め、その双眸は窓から差し込む日差しを受けてきらきらと光り輝くようだった。

白 第七章

感情を表に出すことが滅多にない彼女にしては珍しく、とにかく嬉しそうだ。

 ここ好き。本当に心の底から嬉しかったんだろうな。特別ななにかになりたかったのを踏まえて「私の方が正義の味方ってことになったり」「私が主人公って感じで」と非平凡ポジションを自分に当て嵌めようとしているシーン読むと心に響く。

 

白 第八章

ランユウィ、出ィ子、そしてプリンセス・ライトニングらに一任し、

白 第八章

彼女達が学校を担当をするのであれば心配は無用です」

 ライトニングの正体判明する前から初代と三代目に複数形で初見の時はランユウィと出ィ子含んでるからだと思ってたけど、ライトニングが複数体いるから複数形だったと解釈していいなら布石の擬態性高い。恋々の矢然り後から分かる系の描写ぞくぞくする。

白 第九章

 ファンシーで実用性を欠く揃いのメイド服に身を包んだ少女達がきゃあきゃあと叫びながら玄関から飛び出し、頭を抱えて逃げていく。

 かわいい。約5年前の先生に質問送れる機会part2の時に「シャッフリンには様々なタイプがあるようですがメイドのシャッフリンはいますか?」って質問送ったから実際にメイド服着たシャッフリンが登場して5年越しの疑問が解決したのよかった。

白 第九章

 二人の魔法少女は無数の飴玉と共に空中で交錯した。

 滅茶苦茶に強い魔法少女二人を戦わせてみたいフレデリカの本意から生じた白ベストバウトの一つ。礼儀知らずとか距離感とか初めて巻頭紹介で見た時の印象と実用のギャップ感じる魔法は今迄にもあったけど三代目の魔法は特に無体だった。接触=終わりの描写はQUEENSにもあったからまだ分かるとして精神操作の無効化は七大悪魔とやり合えるのも頷ける力量。

 アスモナみたいな古株で強い魔王塾生があと6人いるのわくわくする(シフィール以外現役か分からないけど)のと七大悪魔の存在考えたら魔梨華よく魔王パムの葬式で暴れられたな!?ってなる。嵐のような存在。

白 第九章

「なんにせよ、ここに居るのは駄目だ」

 プシュケは「さっさと逃げよう」と続け、サリーの「教室に戻ろうねえ」が重なり、二人は顔を見合わせた。サリーは意外そうなものを見る目を向けていた。プシュケはもっとはっきりと、なにいってんだこの馬鹿、という顔で相手を見た。

 傭兵魔法少女とアニメ化(予定の)魔法少女の思考回路の違いがはっきりと表れていて印象深いシーン。こういう場面で「逃げる」を選べるからプシュケは傭兵を続けてこれたのとこういう場面で「助ける」を選べるからサリーはアニメ化する可能性が生まれたのが分かる。時には媚びたり諂ったり情報収集を欠かさなかった本人の努力も加えて。

 プシュケの合理性に食い込むサリーの存在いい。サリーはダーキュと美味しい絡みがあると信じて遭遇まで生き残ってほしいと思ってるけれど再起不能にされたプシュケを守りつつだと厳しそう。何気に強いカラスに期待。

白 第九章

 窓に目を向けた。ガラスに反射した魔法少女がこちらを見ている。カナではない。額には四つの点、聖印が浮かび上がり、己が何者であるかを嫌味なくらい主張していた。

 ついにこの時がきてしまった。黒時点からラツム説の助長材料だった名前髪色高い身体能力グリムハートに詳しい等々を念頭に置いていてもショッキング。一般生徒を守る役目を止めてる点では今迄のカナとは違う存在になってしまったように見える。でも遺物を回収しようとしている=争いの根源を断とうとしている節があるとも捉えれるのでカナの意思が完全に途絶えたとは限らない。

 魔法の国を救う目的で生み出されたラツム様の魔法が本当に「質問をすれば答えがわかるよ」かどうかは疑問。グリムプクが王権神性の元ネタに沿っていたことからカナ……ではなくラツムも元ネタに沿っているのかな。意外な使用方法、拡大解釈あるかもしれない。

 カナの無表情もプキン剣の影響だったのだろうか。もしプキン剣が微笑み以上のある程度の表情を縛ると仮定するとその洗脳主が白の最後に「彼女は顔いっぱいに笑みを広げた」と思いっ切り表情を変えている描写で終わってるの味わい深い。

 現在のラツム様の状態の分かり易い前例が三代目で「私の中のブルーベル」を死と捉えるか否かは定義や個人の見解によるだろうけど自分としては死認識。生命の死ではなく自我同一性の死という意味での死。今時点でラツム様に彼是推察するのは早計と判断し今は惜しみつつ信じようとも思います。

白 第九章

「メイはお前をいつでも爆発させることができる。前爆発させたプキンはそれが原因で命を落とした。それが嫌ならメイのいうことに従え」

 この場面でのメイ登場は滅茶苦茶頼もしい。窃視の防御策の真相がメイだとは予想だにしておらず、この手があったかと素直に驚いた。

 常にスノーホワイトの傍にいたということは一緒に学校生活を送っていて、給食の時間我慢できていたの7753の鞄に入ってた時は美味しい匂いに釣られて顔出してた頃と比べて成長を感じる。給食後にトイレに行って餌付けしようにも一班は集団でトイレ行く派だからその辺の立ち回り難しかっただろうな。「メイは気が長いけど長くない」と言ってるもののこの忍耐は確かに気が長い方。

 limitedの時から「アラビアの踊り子は側溝の中に潜んでいるらしい。あんな場所でよくも隠れられるものだと感心する」とあってこの頃から隠れるのは得意だったのかとしみじみした気持ち。

白 第九章

 結局のところ、一対一で戦いたいと子供のように駄々をこねるライトニングに感化されたというのが一番大きいかもしれない。

「なにを笑っているの?」

「秘密や」

 白で一番好きな戦闘。好きすぎてゲームも作った。この二人の関係が大好き。

 上下関係が嫌いなアーデルハイトが態々頭を下げる程に感化の影響は強く、同時に自分のこともよくわからなくなりながらサービスしてやる所が情緒。漠然と特別ななにかに憧れるライトニングの目に映る魔王塾卒業生のアーデルハイトは同じ雷故か自身と比べて誰かに使われるだけの愛玩用の商品だったいくらでも代わりが利く自分とは違う特別ななにかを感じる所があったのでは。

白 第九章

「特別な……なにかには……なれなかった」

 ここ叫んだ。初めて明かされる思いの内と死の流れに固唾を呑んでたらその後のとんでもない展開でもっと叫んだ。「悪いことはいわないわ。逃げなさい」って忠告が♡9と他のシャップリンセスとの違いを表していて、必殺技やクラスメイトに関心があると分かる反応や協調性や名前のミーニングやカルコロ先生も変わったといってたように、田中愛染さんはライトニング集団の中でも特異の存在だと強く思う。白読んでからプリンセス・ライトニング/田中愛染さんへの好きの質感が格段に変わり自分の中で最高に痺れる存在になりました。生き残って。

 感想③(第十章以降~)に続く。

魔法少女育成計画「白」感想③ - マジカル自分用メモ