アニメ「魔法少女育成計画」の各話感想と問題点と良かった所

 1話、2話、3話と感想を書き連ねる前に、先んじて幾つか触れたいアニオリについて。

トップスピードの遺体をベランダに運ぶリップル

 制作現場でも多数意見が挙がったらしい(オフィシャルファンブック p.85)アニオリ。リップルの心情的にそのまま放置できないであろう見解から生じたこのシーンは夫こと室田昇一がつばめの正体に気付いているため、母子手帳で住所を特定し、玄関ではなくベランダという通常ならあり得ない場所に置いてノックすることで妻と同じような存在が運んだと察せる可能性は十分あるが夫が警察から犯人と疑われてしまう点でいえば釈然としない。リップルがトップスピードの遺体を放置するかの疑問に対する一つの解としてはアリだとしても、あえて描写しない選択肢もあったはずで、違和感が生まれることを厭わないで描写する程の重要性を感じられず良いアニオリとは思えない。

死者の幻影と会話

 あまり好きじゃないアニオリ。

 死後リップルに強く影響を与える程トップスピードの存在が大きかったのはlimitedと白と料理をするようになったことから明らかで、ただ一人だけいた友達を失ったばかりのリップルの精神状態で幻影を見ること自体は納得できる。たが「(旦那に)結局迷惑かけたまま終わっちまったよな」は幻影ではなく死者の魂そのもの寄りの内容になっているのがそういうのでお涙頂戴する作品じゃないだろうと憤りを感じる。別の作品の類似シーン(短い尺)で感動したこともあるので、端的に言うと尺が長いのが嫌。ファニートリックが自分の中の芝原海と会話する場面やマナが羽菜とマーガリートさんに肩に手を置かれる感触を感じる場面のような塩梅だったら良かった。

アニメ版シスターナナ

 本当はどういう心情で自殺したかは原作を読もうの販促に繋がるとポジティブに捉え、内面が描写されなかったのは気にしないようにしてる。2巻ブックレットの「シリーズ構成の段階では、それ(シスターナナの内面)が描かれたエピソードが間に合ってなかったんです。もっと早く分かっていれば、そういう形にしたんですけど……原作者の遠藤さんから、ちらちらと「シスターナナは良い子じゃないですよ」とは言われてたけど、具体的にどう良い子じゃ無いのか分からなくて、描きようがなかったんですよね」のインタビュー内容に思う所はあるものの、令和の2022年に今更こんな所で文句垂れても仕方ないから特に何も言わない。だがもうなにもかも終わったことだ。
 解釈云々でいうと小雪と芳子&スミレが仲良くないと解釈しているのは仲良くする時間が以前よりないって表現なら分かるんだけどなあPrimula farinosaで小雪の友達思いな描写あるのになあとモヤっとしましたが、これも今更言っても仕方ないから特に声を大にしていうことはない。アニメ版シスターナナやコミカライズ版ステレオタイプサイコスイムも媒体の違い認識。尺とか心情表現の落とし込みに対する不満は別媒体認識で隠忍自重してる。勿論良いに越したことはないけど。

スノーホワイトとハードゴア・アリス関連のアニオリ

スノーホワイトがハートゴア・アリスを呼び出す

「わたしもね、一緒にいてくれる人が必要なの」「必要、ですか?」

「うん、わたし弱いから。もう一人は嫌」

打ち解けあった後に原作のシーンに繋がる

「ついてこないで!」

 改変によって酷く自分勝手な印象を強く与えることになったスノーホワイト。何故こうなってしまったかはオフィシャルファンブックp.17の監督の「この子はずるい子で、すごく自分勝手なところがあるんだよ」のような解釈の元に描写されたと推察される。

 地下研究所で犠牲になる魔法少女の声を聴きながらそれを無視インフェルノとデリュージが自殺的な行動に出てしまうことを防ぐため)したり魔法少女なんて関係ないもう知らないと堰を切る所は「自分勝手(思い遣り故の判断でも助けに行ける状況ではないから見捨てる選択を取って二人は知らなくていいと自己判断)」に当て嵌まるとしても、そんなスノーホワイトを「自分の損得の為にずるいことをする子」と描写するのは腑に落ちず、魔性の女という原作ワードに頼り切る訳ではないけれど自分が弱いからって理由でパートナーを作る立ち回りをしてなかったのにどうしてこの方向の「ずるい子」描写をしたのか疑問に思わざるを得ない。

 アリスの最期の改変での「今すぐ病院へ」は病院を促すくらいなら変身を促してくれと傷が治るのが早いと教えられてる上での発言故に引っ掛かる。正直アニメ版の最期より原作の声を出す余力すらなく心の声で想いを伝える方が好きだった。無印は捉え方の一つとして魔法少女スノーホワイトの誕生編のような位置づけ(公式表現)ともいえて何もできなかった後悔が後のシリーズへと続く重大な要素とはいえ、10話の改変は一部から無能と揶揄される所以に大きく関わっているように思う。

「回想=死」の構成になっていた点

 この構成の意図は、下記のようにまほいく制作舞台裏で語られています。

吉岡たかをさん:「考え方としては、シリーズ前半はなるべく死ぬキャラクターの特定に繋がらないようにしつつ、中盤以降はむしろ誰が死ぬかを宣言しちゃうような形にしています。中盤になるとキャラクターがどんどん死ぬのはわかっているので、誰が死ぬかよりどうやって死ぬかでハラハラさせたほうがいいと思いまして

吉岡たかをさん:「先ほどの回想シーンにしても、それがいい話だとお客さんの思い入れも高まるので、その直後に殺すことで心にグサッと来る効果を狙ったりもしました

橋本監督:「この作品ではそういう想いを持ってもらうことが大事で、表現として回避するわけにはいかないんです。キャラクターの死を悲しむ気持ちが、スノーホワイトの置かれた立場を理解することにも繋がるので。ただ、ここまでキャラクターへの愛の深い人が多いのは想定外でしたが」 

 遠藤先生の「魔法少女が死ぬときの意外性やハラハラした感じは、原作でも強く意識しているところです」を尊重して誰が死ぬか分からないハラハラ感を大事にしてもよかったのではと思う反面、原作通りの群像劇をそのままアニメ化した場合「なんか分からんけど1話でパジャマの子が死んだ」と印象を受ける視聴者を出していたかもしれず、アニメーション媒体だからこその工夫が必要で思い入れを持ってもらうことを重要視する判断は適切だったと心得ます。

 しかしながら人が殺し殺されるお話である以上そういった内容が全面的に苦手な方に敬遠されるのは致し方ないとしても、心にグサッと来る効果を狙ったことにより悪趣味さを強く感じる視聴者がもしいるなら回想手法は正しいと一概に言えない。そういった視聴者には遠藤先生は「あくまで『結果的にひどい目に遭う』というのが好きで、最初からひどい目に遭わせることを目的としているような作品は好きじゃないです」の考えの元作品を手掛けていることは知っておいてほしい。ハラハラ感を保ちつつアリスや死者会話の改変を入れずに原作の良さを大事にした構成だったらどうなっていたか考えたくなる。

 以降は声、各話感想。

 東山奈央さんの公式インタビューと吉岡たかをさんのまほいく制作舞台裏談曰くテープオーディション形式で1役につき50人くらい(1巻ブックレットでは1キャラあたり平均80人くらいと記述)の音声データが16人分あったと聞きます。そういった経緯の元イメージに合う17名の方々が選ばれたことにしみじみする。オーディオドラマの方のキャスティングも良くて特に大森日雅さん演じるポスタリィの声は脳が痺れた。アニメ版のスノーホワイトの声もドラマCD版のスノーホワイトの声も両方好きです。キャラソンもいい。アニメ化するとキャラソンが聴ける期待もrestartアニメ化の願いに込めてる。

 

1話

冒頭(アバン)

 鮮明な11話との比較。原作で12人だった犠牲者が24人と倍に。悪魔が召喚された経緯は「試験の能力テスト用に召喚した」となり、試験自体も魔法の国の住人云々は触れずに魔法少女の選抜試験(オフィシャルファンブック p.41)と明言されている。マーガリートさんとネフィのインタビューから分かるように昔の魔法少女選抜方法は集団を狙ったテロに等しく、アニメでは言及がないものの本来この犠牲者達はクラスメイトと語られることからクラムベリーもその例に漏れないかもしれない。

 悪魔嫌いになったクラムベリーが現在悪魔(ホムンクルススラング)そのものになっているの不憫。

OP

 ドヤ顔ルーラ→ジュピターキングプロダクション→ミナユナ画面切り替え→古株三人(クラムベリー、ねむりん、メアリ)でサビに入る流れ好き。アリスの瞳に吸い込まれる所ドキっとする。「壊してしまえ」でファヴが映るの初見の時笑った。このOPにインスパイアされて生まれたのが暴走するトップスピードに叫ぶリップルとマジカロイドの短編なの今思い出しても面白い。

人間態

 話数が進むにつれて続々とアニメーションで見れるのが嬉しかった魔法少女とその人間態デザイン。殺し合わずに皆(13人)でプロゲーマーや親子関係やvになってる公式if世界線につい思いを馳せたくなる。亜柊雫さんと羽二重奈々さんの組み合わせ変身前後で身長差変わらないの凄い。

 

2話

あたふたま

 かわいい。

ねむりんの死亡タイミング


 アニメでは魔法の発動中に死亡した為、現実の肉体が死亡し、魂(夢の世界側のねむりんと表現した方が正かもしれない)だけ夢の世界に残留した経緯が分かり易い。原作で何故今のような状態になったのか詳細な説明はなく、希釈していってるのは読み取れる。restartアニメ化したらマスクド・ワンダーの活躍盛って回想入れて戦犯ねむりんの汚名少しでも塗り替わってくれないかな。

 2話ラストの合歓母、放送当時の吉岡たかをさんツイート曰く吹き替えメインのベテランの方だけあって演技の迫力に心抉られた。

 

3話

「お弁当だー」「お"い"し"そ"う"」

 ここ耳に残る。後の「やったぁ、やったぁ、やったったぁ!」も印象的。

 

4話

4話の作画修正(抜粋)

 上の場面以外にも顔、靴跡、胸の皺、メアリの銃、首輪、陰影と修正多数。4話以降作画修正が目に見えて確認できるように。

5話

クラムベリーが手を口元に持ってくる癖

 キービジュアルとOPでもやってる監督アイディアの仕草。インタビューでマルイノ先生もかわいかったと言ってた。

 

6話

ラ・ピュセルvs森の音楽家クラムベリー

 原作で描写されなかった戦闘にも関わらずベストバウト人気投票で票を集め、遠藤先生コメントでも触れられていたかっこいいアニオリ戦闘。ビスケみたいに一発喰らってやる必要があったかはさて置き、無印アニメで特に印象深いシーンです。

6話の作画修正(抜粋)

 別テイクであったらしいマジカロイドの「さよならー♪」ver.も聞いてみたかった。7話の肉片の黒塗り解禁や8話の上半身が吹き飛ばされてる一般人も含めてBD/DVD版はゴア表現マシマシ。

7話

7話の作画修正(抜粋)

 ナナの掬い上げるみたいなポーズも修正。他と比べてトプリプは特に修正が多い。今のリップルは20~21歳でこの時の会話で明かされるトップスピードの年齢をもう上回ったと思うと切ない。二人でお酒飲んだり料理教わったり赤ちゃん抱っこして珍しくたじたじになったりする世界線を想像すると余計に。

8話

ウィンタープリズン追悼ライブ音楽家

 ここ好き。どうやって山小屋にピアノ捻じ込んだのか。

9話

特に作画修正が多い回

 8話Bパートのメアリに狙われてる際のジグザグ走行(TV放送版は直進で違和感)から地続きでガラスの破片やリップルvsスイムのもちゃっとしてた所などの主に戦闘周り。TV放送版の何も履いてない(ように見える)リップルも修正されてる。リップルの名誉のために画像は貼らない。

ハードゴア・アリスの人命救助

 ヤクザキック何回も見たくなる。不器用ながらもちゃんと救えてて偉い。

10話

ハードゴア・アリスの最期

 この話の放送後に前垢でマルイノ先生が投稿したスノーホワイトとアリスが向き合っている絵今も心に刻まれてる。兎の足、スノーホワイトの最後の物語に再登場してくれないかな。

 

11話

「負け犬が……」

 原作初版~第4刷とコミカライズ版とアニメ版でそれぞれ最期の台詞と地の文が異なる音楽家【2023/04/22追記】朗読劇を踏まえると本編で7歳の少女こと坂凪綾名をきっかけに動揺し(ミーヤと初めて会ったのは7歳)(本人曰く殺すのに年齢は関係ない)、落ちこぼれのたまに殺されたのは最初に立ち返った最期だと感じた。因みにコミカライズ版はスイムを生かして育てれば自分のようになるのではと思考している。そしてあの名台詞(墓穴)を言う。

 戦闘に役立たなさそうな魔法が意外な方法、場面で役立ち番狂わせが起きるのはまほいくの魅力の一つですよね。ファニートリック然りチェリー然り。たまが音楽家を殺した事実結構凄いことなのに今の所教科書に載ってる気配がないのは無念。力量差を鑑みると100回戦っても100回勝てないような相手にシリーズで随一のジャイアントキリングかましたのはようやったよたま。

たまとルーラ

 頭隠してたま隠さずモードかわいい。この時に見たルーラの冊子を参考に校外学習のアイディア冊子を作って絵まで描いたと読解。「友達だって出来た」のアニオリ台詞は話の流れ的にちゃん付け呼びもしているルーラを指しているはずだけど、11話放送時点で16人の日常は発刊済みで、解釈を原作まで広げるとここで言う友達は桑田千尋さん(+千尋さんの友達5人?)を指しているとも受け取れる。

 笑顔のたま→泣きながら斬首で死亡している珠の死体のシーンは分かっていてもかなり心に傷を負う。桑田千尋さん視点だと珠の死亡と同時期に魔法少女育成計画のソシャゲが終了したことで何か関係があると躍起になっても結局何も掴めず、自分を守ってくれた「たま」の姿と友達として過ごした「犬吠埼珠」の姿を想うことしかできないのが辛い。

 

12話

リップルvsスイムスイム

 日本刀、ルーラの刃、フリスビーみたいなのとヘッドホンの模様、脇部分が修正。

 こっちがTV放送版の全体図。TV放送版でもここのカットはかっこいい。忍者とスク水が本気で殺し合うアニメは後にも先にもこの作品だけだろうなと思わせる唯一無二感がある戦闘。試験終了後は作中表現でいう「引退者」だったのにスノ育にlimitedにJOKERSにACESで本当に色々あった結果スイムスイム殺した時と同じように再び私怨で相手を殺そうと復讐者の行動を開始した("フレデリカの命を奪うべく")のは無印終盤を彷彿とさせる因果を感じる。スノーホワイトリップルがどんな結末を迎えるのかドキドキしながら待ってる、赤を。

 

総評

 前半に愚痴を書きましたが、様々なプロの方々がアニメ化に携わり動き喋って躍動するアニメーションを生み出していただいたこと、並びにキャラソンに商品展開に副産物の数々はファンとして大変喜ばしく有難いことであり、きっと何者にもなれない自分がそんな努力の結晶を批判するのは甚だおかしいことではあるものの、良い所は良い悪い所は悪いと自分の感性に従い捉えるのはファンで全肯定は別と噛み分けていてこの作品に対してはファンでありたいので否定と肯定の観点で感想を書いた所存です。全肯定を非難している訳ではない。

 将来的に二期が作られると信じて夢見てる。今でもrestartがアニメ化して映像で動き喋り戦う魔法少女が見れて未判明の人間態デザインが知れてrestart勢の新規短編が読めてキャラソン聴ける世界線をこっそり夢見てる。

【2023/04/22追記】アニメ化決まりました。よかった。